精霊たちの王冠《王国編》
「はいはい、若者じゃなくても親父に付き合ってられる奴なんて殆どいないって……おいリアナ、何とか言ってくれよ」
リゼルに声を掛けられ、カルスの様子を心配そうに見ている少女が振り向いた。
「おじ様、レナお婆さんがシチュー作ったから一緒に食べないかって言ってたよ」
「むっ、レナ婆のシチューか!ならこんな所で時間を潰しておる場合ではないな。
お前達、訓練はまた後でだ!」
そう言い残し、ガルーシャは疲れなど一切見えない軽い足取りで足早に去って行った。
「台風みたいな親父だな………」
リゼルの呟きに、リアナとカルスは否定する事無く苦笑いした。
「カルスは大丈夫?」
「ああ、もう大丈夫だ」
リアナがカルスの様子を気に掛けるが、カルスは何事も無かったかのように、すっと立ち上がる。
それをリゼルはわざとらしく褒める。
「おお、流石あの親父の息子。
あれだけ見事に吹っ飛ばされて、もう大丈夫ってどんな体してんだよ、お前等親子は」
「物心つく前から強制的に鍛えられたからな、あはははっ………はぁ」
カルスは何かを思い出したのか、最後は深いため息を吐いた。
その理由を知るリアナとリゼルは可哀相なものを見る目を向ける。
「じゃ、じゃあ村に戻ろう。早く行かないとレナお婆さんのシチュー全部おじ様に食べられちゃうかも」
「レナ婆のシチューは絶品だからな、食いっぱぐれないように急ごうぜ」
「ああ」