精霊たちの王冠《王国編》
***


 リアナ達が森を歩いて暫くすると、木々に取り囲まれた森から開けた空間に辿り着いた。
 そこには木で建てられた建物がいくつか建ち並び、作物が実った畑がある。


 ここがラコウム村。
 帝国からの侵略を受け、逃げ延びた人達が森を開拓し全員が自給自足でひっそりと暮らしている村で、二年前に領地に帝国兵が進軍して来た時、王弟の一人娘のリアナを連れて逃げた元将軍のガルーシャが、実子のカルス、養子のリゼルと共に辿り着いた場所だ。


 逃れて来た人々が作った村の割には、個々の家々は驚くほどしっかりとしていた。
 逃げてきた人の中に大工を生業にして来た人が数人いた為、その人達の指示の元に作業が行われたお陰だ。

 そしてこの村には国内の人達だけではなく、中には隣国から逃れてきた人も集まって来ていて、かなりの人数の集落となっていた。


 いち早く降参した隣国のマリ国とナーベル国。

 あっさり降参する両国は弱腰の対応と言えなくもないが、帝国に対抗するほどの軍事力を持たない小国には、無駄な犠牲を出さぬ為の最善の策だったと言える。


 しかし、それは皇帝ウラジミールに敗者に対して、情けや慮る気持ちを持ち合わせていればの話だった。

 反抗の意志はないと示したにも関わらず、帝国は両国の王族を殺害、自国の支配下へと納めてしまった。
 多くの兵士や国民を捕虜として虐げ、まるでたちの悪い盗賊のように街や村を襲い、食料や金品などの略奪行為を行う帝国兵。


 そんな場所から命からがら逃げ延びた隣国の人が国境を越え、ここまで辿り着いて来たのだ。



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