精霊たちの王冠《王国編》
村に入り、レナ婆の家に向かっていたリアナが、視線を感じ目を向けると、数人の女の子達が顔を紅くしながらこちら見ていた。
彼女達が見ているのはカルスとリゼル。
元将軍の息子だけあり、幼い頃から上流階級の教育を受けたカルスは、立ち居振る舞いは隠していてもどこか品があり、性格も穏やか。
そんなカルスとは対照的に野生的で、誰とでも仲良くする人懐っこいリゼル。
そんな二人は容姿もかなり整っており、村の女の子達がほっておく筈もない。
しかし、リアナとカルスとリゼルと所謂幼なじみという関係で、そしてリアナの王族という立場上、カルスとリゼルは過保護なほどいつもリアナの側にいたため、リアナは二人に好意を寄せている村のほとんどの女の子から反感というか妬みを買ってしまっていた。
以前、その中の一部の子から嫌がらせを受けた事があった。
すぐさま二人が報復して嫌がらせは無くなったのだが、二人が過保護なまでに守ったことで尚更反感を強まった。
脅して以降は、離れたところから見るだけで虐められる事はなくなったが、顔を合わせようものなら顔を歪めて敵意を向けられる。
勿論、カルスとリゼルがいない所でだ。
チラチラと女の子達を見ているとリアナの様子をいち早くカルスが気付いた。
「リアナどうかしたの? また何かされた?」
「えっ、ううんなんでもない」
「何かあったらすぐに言えよ、二度とそんな気が起きないようにしてやるからな」
そう言いリゼルが彼女たちの方を睨み付けると、可哀想なほどビクついてそそくさと逃げて行った。
兄弟のように幼い頃から一緒にいた二人が側にいる事に不満を感じた事は無かったが、女の子同士の会話もしたいと切実に思っていた。
しかし、村の殆どの女の子達からは敵意を向けられ、残りの一部も火の粉を被りたくないとリアナに積極的に話し掛けてくるものはいない。
リアナは去って行く女の子達を見ながら深く溜め息を吐いた。