精霊たちの王冠《王国編》
帝国から隠れるように森の中に存在する村では、他の街や村に行って仕入れる事は難しく、ほぼ自給自足で暮らしている。
その為、今日も日課としている食材探しに森の中へ分け入っていた。
主に山菜や果物を採るのはリアナ、小さな動物を狩るのはカルスで荷物持ちがリゼルの役目だった。
村に来た当初のリアナは食べられる物とそうでない物の区別も出来ず、毒キノコやただの雑草を持ち帰る日々だった。
しかし、それは仕方ないとも言える。
生まれてきてから村に逃れて来るまでの15年間、時間になれば黙っていても料理が運ばれ、毎日綺麗なドレスを身に付け甲斐甲斐しく世話を焼かれる日々。
そんな日常を送っていたリアナに森の食べ物の良し悪しが分かるはずもない。
逆に、事あるごとに訓練と称して山や森でのサバイバルへ連行。
時には子供二人で置き去りにされるなどなど、かなり激しい訓練を幼い頃から強制的にさせられていたカルスとリゼルは、否が応でも生きて行くのに学ばざるを得ない環境に有った為、なんの苦なく見分けられていた。
いざという時を仮定としたガルーシャの訓練は確かに二人の力となっているが、何度も死にかけた身としては素直に感謝出来るはずもない。
「ピア、それはこっちの籠に入れてきて」
「キュウウ」
ピアと呼ばれている純白の毛をしたリス程の大きさのの白い生き物は、いつからかは分からない小さな頃から、いつの間にかリアナに懐き側にいて、城から逃げ出す時にも一緒に逃れてきたリアナの小さな友達だ。
つぶらな瞳にふさふさの尻尾、兎と猫を足して割ったような見た目の可愛さだけでなく、人の言葉を理解するだけの高い知能を持っていた。
自分とそう違わない大きさの茸を持ち上げ、器用に二足歩行しながらリアナに言われた籠の中に放り込むその可愛らしい姿は、見ているだけで癒される光景で、自然とリアナ達に笑みが浮かぶ。