禁断の壁
lesson
「愛ー、辞書貸してくんね?」


突然ノックもなしにそう言いながら部屋に入ってきたお兄ちゃん。


「ちょっ!ノックくらいしてよね!」


そう言って見ていた雑誌をそっと閉じる。


「何慌ててんだよ。何か都合悪いことでもあるわけ?」

「あるわけないでしょ」


そのまま私に近づいてきたお兄ちゃんは、手元を覗き込もうとするから右手でシッシッとする。

そしてお兄ちゃんが目当てだった辞書を手渡した。


「サンキュー」


そう言って出ていくと思ったら、パッと身を翻して私の方にやって来た。


「何!?」
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