彼女の愛すべきドビュッシー
ソファーの周りは、

たくさんの楽譜の詰まった

本棚に囲まれている。

そこにテーブルが一つ。

「おまたせ。」

「いただきます。」

「どお?」

「あ、おいしいです。」

「若い男の子とお茶って、

 なんか久しぶりよ。」

「そうなんですか?」

「おじさんが多いからね。

 うちのピアノ教室。

 イケメン限定、

 って下に書いておけばよかったわ。

 ハハハハハ。」

先生は豪快に笑った。

「先生は、

 僕にはあまり怒らないんですか?」

「あら、

 怒ってほしいの?」

「いえ。

 そういうわけじゃないですけど。」

「まだ怒るレベルにも達してないわよ。」

「あ、

 ですよね。」

質問、撤回したいほど

なんだか恥ずかしかった。
< 22 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop