彼女の愛すべきドビュッシー
彼女、

そして僕のレッスンも終わって、

家に帰ろうとした。

帰り道、

「ねえ。」

「ありあちゃん?」

ピアノ教室の入口の階段に、

彼女は座っていた。

「今日、

 あたしすごい怒られてたでしょ。」

「うん、

 めちゃくちゃ怒ってたね先生。

 びびったー。」

「もお、

 ヒステリーだよ。

 更年期だよ。」

そういう彼女は、

なんかいつもより元気がなくて、

明らかにへこんでいる。
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