彼女の愛すべきドビュッシー
マクドナルドをでて、

彼女と別れるとき、

僕は言った。

「そういえばね、

 先生は、

 ありあちゃんは

 怒っても怒っても、

 次のレッスンではケロッとしてくるって。

 だから、

 本気で教えれるって。」

「そんな、

 そりゃね、

 もお怒られてばっかりだから、

 それが当たり前になってるのよ。

 まったく先生、

 ケロッとしてくるって、

 泣いていくわけにいかないじゃんかね。

 何言ってんだか。」

「でも、

 僕、

 ありあちゃんが弾いてるの好きだよ。」

「ドレミファレベルの人に言われてもな~。」

そう言いながらも、

彼女に笑顔が戻った。

「先生に聞きにくいことあったら、

 あたしに連絡してもいいよ。」

「まじ?」

「小さい時の楽譜とっておいてあるし。

 夜は大抵暇してるから、

 電話してきてもいいよ。」

「ありがとう。」

赤外線。

これもまた不思議だ。

見えない光で、

彼女とのつながりを持てるのだから。
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