彼女の愛すべきドビュッシー
「ドビュッシーのさ、

 プレリュードって曲があるの。」

「うん。」

「これ弾くとさ、

 あたし、

 お姫様な気分。」

「え?」

「王子、

 ちょっと聴いて。」

(王子?)

彼女はおそらく電話をピアノの

端に置いた。

そして奏でる。

・・・うん。

確かに、

きれいで、

ドレスを着ていそう。

彼女はいつも僕に言う、

「ドビュッシーに対する知識が

 ないからこそ

 感じれるものがある。」

って。

時々切なくなったり、

強くなったり、

でも優しい曲だった。
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