あの子
side ひろくん
「ひーろっ」
セミロングの女子が、俺の肩に顔を乗せる。
背が低くて、可愛らしいその子とは、2週間前に会った。
名前、なんだっけ?
「今日どこ行く?」
「悪い、用事あんだ。また今度な」
そう言うと、その子は不服そうな顔をして、顔を近づけた。
「浮気、してない?」
「……してないよ。ないない」
面倒くさくなって、俺はその場を後にした。
放課後の教室はやけに静かで、誰もいない。
ん?
「…ひろくん」
いた。
学年アイドル、ひよりチャン。
「どうしたの、元気ないね」
ひよりチャンは、顔は悪くない。
むしろ綺麗で、背も高い。
170㎝くらい?
昔、何かのスポーツで全国ベスト8くらいになったとか。
入学式に、たくさん勧誘されてたのが印象に残った。
ひよりチャンは表情を変えず、
「なにもないよ」
とだけ答えた。