あの子
「……は?」
隣を見ると、ひよりチャンは一筋涙を落として
いた。
「あーぁ、泣いたらだめなのになぁ」
「…………」
「監督に怒られちゃう」
監督。
中学のクラブの顧問かな。
一筋だけ涙を落とすと、それからひよりチャンは泣かなかった。
むしろ笑顔で、
「明日も頑張りましょう~」
と右腕を天井に掲げた。
不思議ちゃんだな。
可愛い。
「ひよりチャン」
リュックを背負ったひよりチャンが、教室の扉を開ける。
そして振り返った。
「泣いたら駄目だよ?俺以外の奴の前ではね」
「……ふっなにそれ~」
ひよりチャン。
名前覚えてたなァ。
渡島ひより。
それって……ねえ?笑