あの子
「それに、あたしの嘘もバレバレだよね。
―――――けど、」
「…………」
「行きたくなかったんでしょ」
エスパーかよ、あたし。と、付け加えて、その女は廊下を一直線に走った。
そして、4mほど僕と距離を取ると、
「ゆうくん、前あたしを助けてくれたの。
だから、お返しね」
そう、告げた。
静寂な放課後、晴天、
クラブ棟がある方角を一瞥した彼女は、その一瞬だけ哀愁を見せ、
すぐまたサバサバとした口調で、僕に向き直った。
「覚えてないと、思うけど」