あの子
side こうくん
[好きです。付き合って下さい]
そう書かれたメモ帳は、書道コンクールの参加賞で配られたやつ。
昨日みんなでカラオケ行った時、仲良くなった女子が渡してきた。
そこは、直接言えよ。
ぐしゃりとメモ帳を潰し、教室のゴミ箱にシュート。
あーぁ、直接言ったら付き合ってたかも。
なんで紙?しかも参加賞のメモ帳?
色々とズレてる気がする。
「おい」
短い呼びかけに、俺は無視する。
「おい、コースケ」
声色で誰かわかった。
かいだ。
「彼女が呼んでるぞ」
彼女じゃないっつーねん。
「コースケ」
俺の幼なじみが、手招きをする。
「なに」
「今日クラブ休みなんだ。
ホラ、台風近づいてるし。
しかもうちの両親、2人で旅行行っちゃって……。
だから、コースケの家で夕飯お邪魔するね」
幼なじみは心底困った顔で言うので、俺は了承した。
まー幼なじみだし。
夕飯くらいはいいか。