あの子
side ひより
強い日差しが射す、昼下がり。
夏本番の気温は、運動部のやる気を起こさせる。
私も、その中の1人だ。
「あ、ひより!」
仲の良いクラスメートが、テニスラケット片手に手を振る。
私も振り返して、フェンスに近づいた。
「クラブはどう?」
「絶好調よ。もうすぐインターハイの予選があるの」
「頑張ろうね~」
「うん!いぇ~ぃ!!」
長年の友だった膝のサポーターも取れた。
クラスメートと別れると、第3体育館に向かった。
午前練習もつらかったなぁ。
シュートも全然入んない。
もうちょっと手のスナップを―――
「ひより」
手首をブラブラさせてると、かいくんがなにやら怒ってる。
「俺の昼飯!」
「ごめん、食べた」
しまった。
あのお弁当箱、かいくんのだったのか。