ジュリア
はじまりはじまり
なんとなく、それとなく、当たり障りのない感じに人と接し、他人の意見に抗うこともせずに、気付けば僕は19歳になった。
人と対立したことはない。いじめる側にもいじめられる側にもいない。もしかしたらそれはとても幸せなことなのかもしれない。
しかし、親友と呼べる友人もいない。
だってこの19年間、僕は周囲の人に、興味を持ったことがないのだから。
僕は共働きの両親の間に生まれ、家族は父、母、僕の3人。
幼い頃から両親の帰りはいつも遅く、母が朝の忙しい時間に簡単に作ったサラダやレトルト食品が僕の夕飯だった。
甘えたい時期の小学生の頃はそれがとても寂しく、よく拗ねては部屋に閉じこもっていた記憶がある。だが、それは成長と共にすっかり日常化して、いつしか両親が家にいることを疎ましく思うようになっていた。
一人っ子の僕に両親はとても甘かった。欲しいといえばなんでも買い与えられ、物欲に困ったことはなかった。
18になり、大学進学のためにはじめた一人暮らしでも、仕送りは多く、バイトもせずに一年ほど暇を持て余した。必要な単位をとり、試験さえ通れば卒業なんて容易に出来る。だから必要最低限の授業だけをとった。