天使の声を…


ジェーンは悲しみを堪えながらもユリナを育てた。



そしてユリナが5歳の誕生日を迎えた時


「お母さん、見て、お花の冠」


ユリナはジェーンの頭に自分で作った花の冠を乗せる。


「あ…ありがとね、ユリナ」

ジェーンは我が子を失う悲しみのあまり、すっかり疲れはてた顔になっていた。

「…お母さん…海ってどこ?」


突然ユリナが聞き出す。


「海?」


「本とかに出てくるけど私…見たことない」


「…連れて行こうか?近くにあるし」


「本当?ありがとう!」



ユリナのしぐさを見る度にジェーンは我が子を失いたくないという気持ちが増した。


「ユリナ…」


運が悪いことに、空が少しずつ曇ってきた。


「お母さん…天気…怪しくなってきたよ」


隣でユリナが空を見ながら言うが、ジェーンは無言のまま歩く。


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