天使の声を…
「…助かった…ありがとう」
食事を済ませたウィダルは、すぐに立ち上がろうとする。
「ちょっと待ってください、どこに行くのですか?」
「もう俺は行く、いつまでもここで世話になるわけにはいかぬ」
「まだ完全に回復してないじゃないですか、そんなんじゃまた倒れますよ!」
リナールはウィダルの腕をつかむ。
「…まだここにいてもいいのか?」
「ええ!全然構いませんわ」
「すまないな」
その時はまだ、ウィダルのことはひとりの人間として見ていた。
「リナール、ありがとう…俺行くよ」
ウィダルは扉の前でリナールに言う。
「…また、おいでになって」
「ああ」
ウィダルはそう言うと、扉を閉める。
「……無事に魔王を倒せるように」
リナールはそう言いながら祈った。