キミに捧げる温もりは愛と呼ぶ
プロローグ
───ザーーー
「もぅ良い!!!
あなたも私に同情なんか、しなくて良い…」
雨の中、傘もささずに歩行者路で
そう泣きながら問う彼女。
彼女の右腕を掴んでいた彼。
彼女は彼の手を振り払うと、
数歩後ろに後退った。その瞬間・・・
───キキィイーーー
「危ない!!!」
「きゃっΣ」
───ドンッ
雨でスリップした車が突っ込んできた。
彼は彼女を庇うように
おもいっきり、彼女を押し出した。
「おい、誰か救急車を呼べ!!!」
「大丈夫ですか!?」
集まって来た周囲にいた人々は
すぐに救急車を呼び、
二人に問いかけながら駆け寄ってくる。
「・・・誰かが・・・呼んでる・・・?」
そう言って閉じていた瞳を
ゆっくりと開く倒れた彼女。
うっすらと開かれた、
その狭い視界は、ボヤけていて
はっきりと見ることは出来なかった。
ただの誰かが駆け寄ってくる
人影だけが、彼女の瞳に映っていた。
そのまま倒れた彼女の
意識は、その場で途切れてしまった…。