男と女のよくある恋愛事情【短篇】
何年も時を過ごし、いずれは一緒になるものだとばかり思っていた。
いや、今もまだ少し期待を残している自分……だからぼんやり落ち込んだ振りが出来るのかも知れない。
愛情を過信していた?
いいじゃないか……
穏やかな日常に、振り返れば優しい幸せを感じる事が出来れば。
気分が悪い日もある。
今はその理由すら忘れてしまった。
携帯が小刻みに揺れた……
マナーモードの振動にすら、一瞬驚いてディスプレイを見る。
彼女だ――。
いつもの口調で、「そろそろ帰ろうかな……」と言う言葉を期待して……
親指は着信ボタンを押し、俺は目を閉じた。