恋ラムネ
「ネコさんどこにいってたですか?」
ネコさんを抱き上げながらそう聞くと“ニャー”とひと鳴き。
すると隣から手が伸びてきてネコさんの頭を優しく撫でた。
「このコはまだ子猫みたいだね…きっと君と遊びたかったんだろう」
まるで私とネコさんが何故知り合ったかを知っているような言葉に少し疑問をもつ。
「おにいちゃんは、わたしとネコさんがおしりあいってしってたですか?」
「ううん、ただ君が“ネコさんどこですか?”って呼びながら泣いていたから…、きっとこのコに着いてきたんだろうって思ったんだ」
「スゴいですっ!?あたってますっ!!」
まるで探偵さんの様な推理に興奮気味の私。
(すごいなぁ、そんけいするなぁ。)
小さな尊敬の眼差しを受けて、男の子はニッコリと微笑む。
ネコさんを下に降ろしてあげて、再び男の子と手を繋ぎ、今度は二人と一匹で歩き出す。
「ネコさんちゃんとついてきてるです」
「きっと君が好きなんだよ」
そんな話をしながら歩いていると…
視界に光が飛び込んだ。
「さぁ…出口だよ?…此処からはわかるかな?」
「はいですっ!!」
光のさす森の出口…
繋いだ手をそのままに、一緒に出ようとする私の足は止まった。
「?おにいちゃん?」
男の子が動かないのだ…
「おにいちゃん?どうしたですか?」
俯く男の子の顔は、前髪で見えない…
そう言えば、とても綺麗な黒髪だなぁなんて思っていると…
「………御免ね?…僕は此処から出られないから…だからこのコと二人で行けるよね?」
優しくそう問う男の子。
このコとはネコさんだ。
「どうしてでられないですか?」
すると男の子は悲しそうにふんわり笑えば…
「それが僕の役目だからだよ」
ザァー……
風で木々の揺れる音がやけに大きく聞こえた…
掌から暖かな温もりが消えていく…
繋いだ手が離された。
「さぁ、もう日も傾く…、お家へお帰り?」
確かに光のさし込む出口からは、夕日色が伺える…ならば……
「おにいちゃんはかえらないのですか?」
すると男の子は…
「僕の家はこっちなんだ」
そう指差すは森の奥…
笑った男の子はそのまま身を翻して…
「またね」
森の奥へと消えて行ったのだった。