佐藤君と鈴木君
第三話 図書室
本っちゅーのは不思議なもんやねぇ、と独り言のような小さな声で鈴木が言った。
「どこが不思議だと思うわけ?」
おどけるように聞いてみると、ニンマリ悪そうな顔で笑った優等生は、手にしていた一冊の本(森鴎外全集)を興味なさ気にぱらぱらと捲りはじめる。
「つまらん本を読むと眠うなるやろ?」
「あ?…んー、まあね」
確かに、基本的に本を読まないオレでも、特に興味のない分野の本は枕にでもしてしまいそうな勢いで眠くなる。身近な例で言うと、教科書とか教科書とか教科書とかね!
そんな読書離れのお手本のようなオレとは正反対の読書好きな鈴木は、分厚い全集をぱたんと閉じて丁寧な動作で本棚にしまった。そうして、親の敵でも見るような鋭い視線を全集たちに向けて、ぽつりと呟いた。
「オレ、鴎外嫌いやねん」
「は?」
「読みにくいねん。何でわざわざ文語調で書くんかが理解できひん」
え、ちょ、お前今見てたじゃん!オレがそう言う前に、「それに比べて漱石はホンマにええ作家や」と奴は夏目漱石を称える言葉を口にしてオレの言葉を封じてしまった。
どうしたものか、とオレがちょっと戸惑っていると、鈴木は「そんでな」とオレのほうへ顔を向けてさっきの話の続きだと思われる内容を話し出した。
「オレが、鴎外はつまらんと思うやろ?そしたらな、”つまらん”と思った瞬間に眠くなるわけな」
「はぁ…?」
いまいち解らん。頭のいいやつの考えることは凡人のオレには理解できんのだ。…いや、もしかするとオレの頭がずば抜けて悪いのだろうか…?
「どこが不思議だと思うわけ?」
おどけるように聞いてみると、ニンマリ悪そうな顔で笑った優等生は、手にしていた一冊の本(森鴎外全集)を興味なさ気にぱらぱらと捲りはじめる。
「つまらん本を読むと眠うなるやろ?」
「あ?…んー、まあね」
確かに、基本的に本を読まないオレでも、特に興味のない分野の本は枕にでもしてしまいそうな勢いで眠くなる。身近な例で言うと、教科書とか教科書とか教科書とかね!
そんな読書離れのお手本のようなオレとは正反対の読書好きな鈴木は、分厚い全集をぱたんと閉じて丁寧な動作で本棚にしまった。そうして、親の敵でも見るような鋭い視線を全集たちに向けて、ぽつりと呟いた。
「オレ、鴎外嫌いやねん」
「は?」
「読みにくいねん。何でわざわざ文語調で書くんかが理解できひん」
え、ちょ、お前今見てたじゃん!オレがそう言う前に、「それに比べて漱石はホンマにええ作家や」と奴は夏目漱石を称える言葉を口にしてオレの言葉を封じてしまった。
どうしたものか、とオレがちょっと戸惑っていると、鈴木は「そんでな」とオレのほうへ顔を向けてさっきの話の続きだと思われる内容を話し出した。
「オレが、鴎外はつまらんと思うやろ?そしたらな、”つまらん”と思った瞬間に眠くなるわけな」
「はぁ…?」
いまいち解らん。頭のいいやつの考えることは凡人のオレには理解できんのだ。…いや、もしかするとオレの頭がずば抜けて悪いのだろうか…?