俺様社長は左手で愛を囁く
相手は私に微笑み一礼して去っていく。

・・・

歩いていたはずの私の足は、

その場から動けなくなってしまった。

・・・

「冬美?」

私の手を手繰り寄せ、

翔が私の名を呼ぶ。

・・・

私は通り過ぎたその人をただ見つめていた。

・・・あ。

曲がり角の所で、

その人がハンカチを落としていった。

・・・

私は翔の手を離し、

それを拾いに行く。

・・・

そして拾い上げ、

声をかけようとしたが、

そこには、もう、その人の姿はなかった。

・・・

私の不思議な行動に、

翔が駆け寄り、

声をかける。

「冬美、一体どうした?」

その言葉で、ようやく我に返る。
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