俺様社長は左手で愛を囁く
言い終えたオレの服の裾を、

冬美が軽く掴んだ。

・・・

オレは振り返り、

冬美の顔を見つめた。

・・・

「綾野さん、もういいです。

・・・もういいから、

今夜はもう、帰ってください」

真っ赤に腫らした目が、

痛々しく、

それでも、

笑顔を作って見せる冬美。

・・・

胸が締め付けられそうだ。

・・・

「早乙女さん」

・・・

「私は大丈夫だから」

「それのどこが大丈夫なんですか?

そんな貴女をオレは」

・・・見ていたくない。


「帰って」

夜の静寂に、

冬美の声だけが響いた。
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