俺様社長は左手で愛を囁く
男は右手で腕枕。

左手で私の頭を撫でながら言った。


「昨夜言ったはずだ。

貴女をさらいに来たと・・・

オレの名前、憶えてるだろ?」


・・・

神宮寺翔。

神宮寺カンパニー社長。

・・・

初めてまともに見たその顔は、

あまりに美しかった。

男にも女にも見えるその顔。

ストレートの髪が、スッと目にかかり、

それを掻き上げるしぐさも、

誰が見ても、溜息をつきたくなる。

・・・

そんないい男が、

なぜ私をさらいに来たと?

火遊びでもしたかったのか?

疑いの眼差しで、翔を見つめる。

当の本人は、涼しい顔。

その顔が、少し腹立たしかった。

・・・

「コーヒーに、何か入れましたか?」

私の突然の問いかけに、

翔はにこやかに頷く。

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