俺様と闘う私『一部・完』
 「し、き……っ」



 無理矢理、彼方君の方を向かされたまま後ろから抱きすくめられた私は……



 もちろんタジタジで。



 後ろを振り向こうにも、肩越しから伸びてきた手によって顎が固定されていて動かすことが出来ない。


 そんな私達を、睨みつけている彼方君。




 ―――その視線が、痛い。



 痛さのあまり、志貴の手を振りほどこうと小さくもがくのに、身動きのとりにくい今日の服装のせいか、私にはいつも以上に勝ち目がない。



 「あなた、誰ですか?」



 そんな私の様子をチラッと見つつ、彼方君は私の背後に居る志貴を冷たく見つめて言った。



 その目が怒りを孕んでいることは、もちろんパニック状態の私には感じ取れていなかった。



 「渡辺だ。……コイツは俺の連れだ。行くぞ」


 「へっ!? ぅわっっ、あわっっ」



 顎にあった手がスッと離されたかと思ったら、瞬時に左腕を掴まれてホールの中へと連れて行かれた。
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