俺様と闘う私『一部・完』
 プルプルと震える拳を太ももの上で握りこみ、睨みつけそうになる瞳を必死で下げて、目の前のカップを眼力で壊せそうなほど睨みつけた。



 憎んでいいはずのこの人を。

 
 睨めばイイって思ってる。



 その反面、これほどに委縮している彼を、これ以上私が苦しめるのはどうかと思った。



 でもそう思う心は1割もない。


 だからせめて、視線を外した。




 『黙って、座る』




 どうしてこんな酷なことを志貴は強いるのかと、思った。



 震えるのを止められず、爪を手のひらに立てるとすっと隣から手が伸びてきて、私の手はテーブルの下で握りこまれた。



 その温もりが少しだけ、私に冷静な心をもたらす。



 睨むのは止められないけれど、手が出そうな衝動をどうにか押さえることが出来、ゆっくりと震えを止めた。



 一方の志貴は、先程の質問から無言のまま、目の前の男性を見つめていた。






 立ちあがる香りと湯気に罪はないけれど、最後まで1滴も減ることなく、カップは置かれたままだった。
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