俺様と闘う私『一部・完』
 「行きますか、警察」




 漸く落ち着きを見せた彼に、志貴は静かに尋ねた。



 
 「―――はい」




 泣ききってスッキリした表情を浮かべた彼は、決意した顔をして、初めて志貴の目をしっかり見ながら返事をした。




 「罰を受けてからが、償いの始まりです」



 
 志貴がそう語り始め、目の前の男は目を見開いて志貴を見た。



 「法的な罰は、あくまで法の裁きです。そこに心はありません。
 あなたの被害者へ対する償いの気持ち。それがあるなら……罰をきちんと受けて、しっかりと反省した上で心ある償いをして下さい」


 
 志貴のその言葉に深い意味を感じ、私はギュウッと胸が熱くなった。



 彼は、また涙を滲ませてコクコク頷くだけだった。



 「出ましょう」




 掴んだままの手が緩められ、志貴が立ち上がると男もふらふらしながら立ち上がった。



 私も……ゆっくりと立ち上がる。



 外にはいつの間に呼んだのか、病院で見たあの刑事さんが居た。



 「ご苦労様です」




 そう志貴が声をかけると




 「ありがとうございました」



 警察の人は頭を下げて、そしてちらりと彼を見て車に乗せ、去って行った。
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