俺様と闘う私『一部・完』

宅配

 翌日……『朝9時に来いよ』なんて、無茶苦茶なワガママ希望を出してきた奴に合わさざるを得なくなった私は―――


 他のお客様との兼ね合い上、少し配達時間を早めたいと渡辺さんにお願いした。


 渡辺さんご夫婦は快くOKしてくれたので、私はホッとした。


 同じマンションまで二度も回るなんて、出来れば避けたい……


 こちらの我儘を承知でお願いしたけど、飲んで頂けて本当に助かった……と思いつつ家を出る。


 と言っても渡辺さん宅への配達は来週までないから、むしろ配達のない期間、毎日隣へ通うのがばれないかとその方が冷や冷やした。


 ―――うん、祈ろう。


 どうか、会いませんようにと。


 


 そんなことを思いつつ、奴の家での信条を掲げた。


 なるべく、できるだけ、しかもソッコーで!!

 

 商品だけ渡したら私は急いでエレベーターを降りる。


 そう決意して、マンションへ乗り込んだ。



 コンシェルジュのおじさんが、朝も早いというのににこやかに居たのでその笑顔にちょっぴり気持ちが和らぐ。



 「おはようございます!」

 「おはよう。あれ? 今日も配達?」

 「そうなんですよー。ちょっと別のお宅でもご要望がありまして。毎日通わせていただくことになりまして……」


 

 毎日来るだなんて変だよな……と自分で突っ込みつつ、ドキドキしながらそう言うと


「そうなんだ。朝から毎日ご苦労様。あ、いつものもらっていい?」

 「はいっ」
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