俺様と闘う私『一部・完』
 と、内心思ったけれど。


 そこは何と言っても私は今仕事中。


 引きつりそうになる頬の筋肉をフルで持ち上げて、モニター越しにもニコヤカ且つ爽やかに映るよう笑顔で答えた。



 「おはようございます。御堂です。配達に参りました」
 

 「あぁ……お前か」



 ピッ



 ブチっと音声が切断され、自動ドアが開いた。



 『あぁ、お前か』!?




 朝から喧嘩売っとんのかコルァアア!!



 ピキピキと怒りの青筋が立ちそうになるのを堪えながら、私はエレベータに乗り込んだ。



 ―――ダメよ!

 耐えろ、耐えるのよ理香!!



 奴の暴言は今に始まったことじゃないわ。


 落ち着いて、冷静ーーっに対応よっ!!


 頑張れ、負けるな!!



 私は両手に握り拳を作って、グッと力を込めた。



 今日こそは……今日こそは客として丁重に対応しよう、それが私の仕事!



 エレベーターで20階まで上がる間中、強く意気込んだ。


 そして到着した20階。


 2度目の戦場へと私は1歩を踏み出した。
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