俺様と闘う私『一部・完』
 玄関前までたどり着くと、また軽く深呼吸をした。


 例によって、ドアを開けて待ってる……なんて奴ではないので、再度インターフォンを玄関で押すことにした。



 ピンポーン、ピンポーン



 2連続で鳴ったドアベルの後に



 『開いてる』



 ブチッ



 インターフォン越しの返答の後、速攻で切った音が聞こえた。


 ってさ。


 開いてるって言われて、お客様のお宅を訪問した販売員ごときが、勝手に家のドア開けられるわけないじゃないかっ!!



 さすがの私も困惑した。


 いくら奴がムカつくと言っても、友達でもなければ何でもない、赤の他人。


 ―――しかもお客様なのだ。


 嫌だろうが、なんだろうが。


 例え俺様な野郎だろうが。



 開いてると言われて、ハイそうですかーって開けられるわけがない。


 考えに考えた挙句、私は玄関の前に立ち往生する羽目になったんだけど……



 奴は出てこない。



 本気で、私が勝手に玄関のドア開けて入ってくれば良いとでも思ってるんだろうか?
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