俺様と闘う私『一部・完』
 はー、ありえないしっ。


 自己中め!!


 来いって言った時間に来たのにぃい!!


 玄関出るくらいできるだろ!?



 と怒りの気持ちが湧いてきた頃。



 ガチャ



 漸く目の前のドアが開いた。



 遅い。


 遅すぎるし。


 ジト目で睨みそうになるのを精一杯押さえて



 「おはようございます」



 にこやかに挨拶した。



 ―――なのに、なのにっ!



 「手間かけさすんじゃねぇよ」



 黒のジャージにTシャツ姿。


 いかにも寝起きですって感じの整ってない髪。


 だるそうな顔で、私の笑顔と挨拶を無視して発した奴の一言目がそれだった。




 殺意を覚える



 ってこういうことなんじゃないんだろうか?



 私は自分の頭の辞書にそう書き加えることにした。



 奴はというと、ドアを開けたまま顎でしゃくって



 「ん」



 って言うから、どうやら入れってことらしい。


 敷居をまたぐのは如何なものか? とは思うもののまた『手間かけさせるな』的なことを言われるのも癪なので、恐る恐るながら入ることにした。



 95円の商品一つ。


 たかが1本、されど1本。



 これを配達するだけに私の神経は、どれくらいすり減ってるんだろうか?


 もし消しゴムみたいに私の神経というものが形になって目に見えていたとしたら、この数分で確実に私の神経消しゴムは4分の1くらいすり減ってると思う。


 そしてきっと、周囲はすり減ったカスだらけに違いない。
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