俺様と闘う私『一部・完』
 「うちが買ってた商品は、スーパーじゃ手に入らないし、やっぱり御堂さんの笑顔を見てきたでしょう? それがなくなっちゃって寂しくてね」

 「そう言ってもらえると嬉しいです」

 「二人きりで、こんなところにこもってるとどうも寂しくて……例え毎日じゃないとしても、御堂さんが来てくれる日が楽しみで。それがなくなっちゃって、すっかり生活のメリハリが減ってしまってね~。
毎日飲んでたのを止めたせいか、一気に体調管理もだらけちゃって。なんてこちらの私情ばかりなんだけれど……遠いのに御堂さんに来てもらうのは難しいかしら?」


 どこまでも嬉しいことを言ってくれる渡辺夫人。


 その夫人の言葉が胸に響いて、とてもじゃないけれどこの場で無碍に断ることなんてできなかった。



 
 「……分かりました。時間調整してマネージャーに相談してみます。お返事はまた後ほどさせて頂くと言うことでよろしいですか?」
 

 「えぇ。えぇ! ありがとう。また会えるのを楽しみにしているわね」

 「はい、私も。では失礼しますね」
 

 「こちらこそ、お邪魔したわね」



 そう言って、静かに電話は切れた。



 これが、あの俺様との出会いを導くとはこのとき思ってもみなかった……
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