俺様と闘う私『一部・完』
 ひぃぃぃいっ!!


 いつもより低い声に、頭が冷えた私は固まって大人しくした。


 手はとりあえず胸元に置いて、足はぎゅっと縮こめた。


 ―――というか!


 重い、よねぇ?



 「あの、下ろし」「黙れ」



 言い切る前にシャットアウトされた。



 しかも



 「腕は首に回しとけ」



 指示つきだった。




 言い返したいことはいっぱいある。


 けど今私は完全に地位的にも身体的にも弱者で。


 熱のせいもあって、素直に腕を志貴の首に回していた。


 そうすると、体が安定して少し落ち着く。



 トクトクトクトク



 腕を回したことで密着したせいか、志貴の心臓の音が聞こえる。


 何がなんだか分からないこの状況。


 私はたんなる雇われの配達員なだけで。


 彼は私の顧客の一人。



 それだけの関係のはずなのに……



 今この時間が、この瞬間が―――それだけじゃない何かを感じさせた。



 けど。



 それは、きっと



 ―――熱のせい。
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