俺様と闘う私『一部・完』
 そう思いながら、温もりと揺れにたゆたう私は自然と瞼が下りてきて……



 ―――ドサッ




 ベッドに下ろされたときには完全に意識を手放していた。


 まだ何度かしか会ったことのない、この男の前で。


 しかも服まで借りて。


 お姫様抱っこされて。




 だけどそれが嫌じゃない私。





 大して知りもしない男の前で、穏やかに眠ってしまった私はバカだと思うけど……



 そんな私をこの男がどうこうするハズがないって、分かっていたから自然と寝てしまったのかもしれない。



 「ホント馬鹿だな、理香」



 フッと笑いながらデコピンを食らわされたのは知らないけれど。



 その時に浮かべた私のしかめ面に志貴が明るく笑う声だけは―――



 眠りに落ちながらも耳に残った。
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