俺様と闘う私『一部・完』
 「熱は?」


 近づいてきてそっとベッドの端に腰掛けると、上半身を乗り出して私の方へと手が伸びてきた。



 ―――何か来るっ!



 反射的に感じとって、体をビクッと後ろの方に引いたけど……そんなことで志貴の手から逃れられるわけはない。



 そのひんやりした手が私の額を覆うように、逃れられずそっと乗せられた。




 あ……気持ち、良いかも



 熱で潤んだ瞳をギュッと閉じて、その冷たさを深く感じとる。



 けれどその手はすぐに離れてしまった。


 

 いつもなら触れられてる方がありえなくて嫌なはずなのに……今は離れて欲しくないって思った。



 「まだあるな……理香、飯食えるか?」



 いつもは冷たいというか、キツイというか、優しい言葉なんて絶対にかけてくれない志貴が。


 私の御飯を気にかけてくれていた。



 ―――なんで?



 そういう想いが一瞬駆け巡ったけれど



 「いらない」



 素直な感想が口から零れただけだった。



 「ならいい。これだけ飲んで寝てろ」



 そう言って渡してきたのは……ちょっと大きめの薄いブルーのグラスに注がれた、おそらくスポーツドリンク。


 少し丸みのあるそのグラスは、持ちやすくて、そしてひんやりしていて気持ちいい。


 私は言われるがままそれを口にした。



 ただ……
< 66 / 213 >

この作品をシェア

pagetop