俺様と闘う私『一部・完』
 少し落ち着いた脳が、これ以上言いなりになるを拒否した。


 ―――私、こんなとこで寝てちゃ駄目だよ、ね……?



 いくらなんでも、ただの配達員の私が、悠長に志貴の家に上がり込んで……


 しかも熱が出たからって、ベッドを占拠していいはずがない。


 それくらいのことに気が付く程度には頭が回ってきた。



 グラスをコトリとサイドテーブルの上に置くと、私は布団を捲ってベッドから出ることにした。




 「おい」




 冷たく放たれる言葉。



 まだベッドの端に腰かけていた志貴が、私に一言発した。


 だけど、こればかりはぼんやりしてるわけにはいかない。



 「ごめん、なさい。もう帰る、から。服、また洗って、返すね」



 男の人の服を着たままだとか、志貴に抱きあげられたこととか……今、志貴のベッドに寝ちゃってることとか、お風呂借りたことも。
 

 

 忘れてない恥ずかしいことや、常識的にダメだろってことはいっぱいあるけれど。


 熱でぼんやりしている今の私は、そんなことが恥ずかしいとかダメだろうとかいうことにまで頭が回らなくなっていて。


 だから、帰らなきゃという一心だけで布団から出ようとした。
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