俺様と闘う私『一部・完』
 次に目が覚めたら夕方だった。


 私の熱はすっかり下がっていて、雨は上がっていた。


 ぼんやりした思考のままベッドから下りると、先程は気付かなかったけれど近くに一人掛けのソファがあることに気が付いた。


 そして……そこで、小さく寝息を立てている志貴がいることにも気が付いた。



 「寝てるし……」



 いつもは言いあいばかりしているけど、心配して傍にいてくれたのだろうか?



 なんか、ジンと込み上げてくるものがある。




 私が熱を出したからって、こんな風に傍に居て看て貰うなんて……初めてだ。


 うちはずっと母が働きに出ていて、父が病に倒れてからは正直ほったらかしにされていた。


 それが寂しいとか悲しいとか、そうは思わなかったけれど……


 熱を出した時に、温かいぬくもりが欲しいと思ったことはある。


 高校に行ってからバイトなんかを始めてからは、熱が出ても普通に出ていた。


 もちろん、誰にも気付かれないようにして。


 だから……私が熱が出てるって気が付いて、ずっとそばにいてくれたことも。


 それが、こんなにも温かいものなんだって気づかせてくれたことも。



 そんなことが嬉しいと感じて、涙が出そうになった。



 どうして、私なんかにこんなにしてくれるんだろう……?
< 70 / 213 >

この作品をシェア

pagetop