俺様と闘う私『一部・完』
 「あの、ね。今日帰って来ないから」

 「は……?」



 流石の母も私の言った言葉が理解できなかったのか、口をパカッと開いて固まった。



 「だから、泊まり。ちょっと用が、あって……」

 「はぁ」

 「明日は! 早めに帰ってくるから! おばあちゃんのこと、よろしくね?」


 私が一気に捲し立てるように言っても、未だ理解不能という顔で私を見つめる母。



 10秒くらい、見つめあっただろうか。


 ようやく落ち着いたらしい母はやっぱり『母』だった。



 「あんたも大人なんだから。自分のことは責任持ちなさいよ」



 真剣な眼差しでそう言ったかと思った。



 
 「うふふふっ」



 と加わったセリフがなければ。



 が、しかーし。



 「あ、あのねお母さん。私、デートとかそんなんじゃないんだよッ! し、仕事!! 仕事みたいなもんなの!!」

 「えー、でも男の人と会うんでしょ?」

 「うっ……そ、それはっ」

 「ムフッ」



 ―――ダメだ。


 違う違うと言いながらも、志貴が男であることは否定できない。


 嘘つけばいいのに、それが出来ない自分が恨めしい。
< 81 / 213 >

この作品をシェア

pagetop