俺様と闘う私『一部・完』
 ―――えっと……どちら様?



 私が固まりながら玄関に突っ立っていると、しばらくしてから抱きついてきた女性が、ゆるゆると腕を解いてくれた。



 「待ってたわよ、理香ちゃん」



 まるでハートマークが語尾につけられていそうな声で呼ばれた。



 ――――――



 「じゃ、とりあえず脱いで」

 「……は?」



 という会話をしたのが10分前のこと。



 私は玄関で激しい抱擁から解放された後、ずるずるとリビングに連れられ、そのまま風呂場へ放り込まれた。


 そして現在はというと、シャワーを浴びている。



 「なんで、こうなる?」



 私は、自分自身にそうツッコみながら体を洗った。



 だって、



 「体洗って来てー。めっちゃ丁寧に洗わなくてもいいけど。あ、髪はしっかり濡らしてね」



 っていう指示が下されたんだもの。
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