澄んだ空の下で

「あっ!そうだ」


頭を軽く擦っていると、麗美さんの弾けた声に、素早く身体が反応する。

首を傾げながら視線を送ると、麗美さんは目を大きく見開いた。


「ね、ねぇ…大丈夫だった?」

「え?」

「ほ、ほら椎葉くんだよ。若菜ちゃんが最後に接客した」

「あー…ま、まぁ…」


逃す様に軽く言葉を流す。

まさか、あたしと恭が知り合いだなんて思ってないはず。


だから、敢えてあたしは言わなかった。


「でも、不思議だったなー…」

「何がですか?」


首を傾げながら顎に手を添える麗美さんは、何か考える様子だった。


「知ってる?あの人。大手会社の社長の息子。凄いんだって!家は大豪邸だし海外にも別荘とかあったりして…」

「へー…」


もう、言う事が何もなかった。


だって、本当にあたしとは住む世界が違う。


「だけどさ。椎葉くんって絶対に指名とかしないんだよね」

「…え?」


一瞬、思考が止まった。

指名をしない?



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