澄んだ空の下で
苦しみの扉
「若菜ちゃん、また体調悪い?」
もう、美奈子のこの言葉を聞くのは何回目だろうか。
ここ1週間は毎日のように美奈子はそう声を掛けてくる。
…そんな風に見えるのだろうか。
「え、…そんな事ないけど」
いつもこの言葉を返しているような気がする。
「はい。これあげる」
昼休み。
目の前にいる美奈子は菓子パンを差し出してきた。
「このクリームパンね、すっごく美味しいの。クリームが濃厚」
そう言って美奈子はニコっと口角を上げて微笑む。
「ご、めん…美奈子――…」
「ダメ!!若菜ちゃんの為に買って来たんだから!!」
パンに触れて返そうとした瞬間、美奈子の大きな声で一瞬めを見開く。
「でも」
「若菜ちゃん食べてないじゃん。だから、ね」
美奈子はパンをあたしの手に握らせ、もう一度軽くほほ笑む。
「ありが、と…」
「ねぇ、若菜ちゃん?」
覗き込む様に名前を呼んだ美奈子にゆっくりと視線を上げる。