澄んだ空の下で

日が経つうちに、もうどうでもいい様に思う反面、恭の顔が頭の中で浮かんで仕方がなかった。

もう、どれくらいあのビルに行ってないんだろうか。


こんなに日が経つと、凄く行きずらい。


会える場所と言えば、あのビルしかなくて。

だからと言って、行こうなんて思えなかった。


行って、どんな顔をしていいのかさえも分からなかった。


放課後の帰り道と言えば、コンビニか本屋さんに立ち寄るくらい。

そこで雑誌に目を通したり、そんな事をしてばかり。



そんなある日。

いつも通りコンビニを出て、マンションに向かう途中だった。


人通りの少ない路地を歩いている途中、グッと誰かに腕を掴まれ、


「…きゃっ、」


声と同時にグランと身体が反り返った。

それと同時に塞がれる瞳。

何かで覆われた様に視界が真っ暗になった。


「ちょっ、なんなの!!やめてよ!!」


張り上げた声に同じく塞がれる口元。


「声、だすな」


そう小さく呟かれた男の声にゾクっと寒気が走った。


…だれ、なの?



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