澄んだ空の下で

一瞬何が起きたのか分かんなかった。

理解するのが難しかった。

何が起こったんだろうと…


でも、だからだった。ドクンと心臓が波打った瞬間、あたしの足は勢いよく動きだす。


別に嫉妬とかそんなんじゃない。

…って思ったけど何だか分からないこの感情が腹立たしい。


だって、ほら。あの女の人見たことがある顔だったから。

一番初めにココにスマホを返してもらおうと思った時に出会った人。


確かサラって人。

だからなんだ。


あたしを見た瞬間、厭味ったらしくほほ笑んだ。

おまけに恭とキスするなんて…


恭の反応なんて見てないけど、その後が気になって仕方がなかった。


足を止めたのは美奈子が居る店の真ん前だった。

荒れた呼吸を整えようと必死で肩で息をする。


胸に手を当ててドクドクとなる心臓を沈めようと必死だった。


「…若菜ちゃんっ、」


不意に聞こえたその声にドクンと心臓が波打つ。

沈めようと思った心臓がまた勢いよく鳴りだし、恐る恐る視線を向けると、地下の出入り口から見上げている美奈子だった。



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