澄んだ空の下で
二人の時間
自分にでも分からなかった。
こんなに苛々していることが。
むしろ、なんでこんなに苛々してるのかさえも分かんなかった。
大通りの人混みをかきわけるように足を進める。
早く帰って眠りたいと、そう思った時――…
「…若菜?」
不意に聞こえた声に思わず足を止めてしまった。
「若菜だろ?」
もう一度聞こえたその声に視線を向ける。
「…っ、」
…レオ。
「良かった、一瞬間違ったかと思った。なんか若菜変わったな」
そう言って微かに微笑んでくるレオに思わず息が詰まりそうになった。
ドクンと揺れる心臓が何故か苦しい。
なんで、あたしの名前を呼んだの?
「久しぶり若菜」
「……」
レオは軽々とそうあたしの名前を呼ぶけど、あたしは口さえも開こうとしなかった。
一度は本気で好きで好きで仕方がなかった人。
離れたくないって、そう思った人。
でも、アンタはあたしを裏切った人。
レオはサエコと…