澄んだ空の下で

どっちが慰めてんのか、分かんなかった。

本当はあたしが恭を慰めなきゃいけないのに、あたしが慰めてもらってる。


…ごめん、恭。

何も出来なくてごめん。


こんなに、こんなに密着してるのに“好き”の言葉も言えない。

恭だって言わない。


千沙さんが言ってた。

恭は誰とも付き合わないよって。


だから余計に苦しくなった。

泣く理由の意味は、それなんだよ。


無理でしょ?

ごめんって言うなら、なんとかしてよ。


それを言ったら恭はどうする?



「…いきたい所、あんだけど」



暫くして身体を離した恭は、ゆっくりと身体を起す。


「…うん、どこ?」


目尻に溜まる涙を拭うと、少しだけ深呼吸した。


「若菜、チャリある?」

「あー…うん、マンションに置いてる」

「んじゃ、取りに行くぞ」

「え、何処行くの?」

「あっちの丘」


恭が指差す方向はここから見える丘だった。


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