澄んだ空の下で
急な坂を二人で押しながら頂上まであがった。
もうその頃には日は完全に落ちていて、辺りは真っ暗。
でも、その先に見えた物に心を打たれそうになった。
「すごーい、なにこの夜景」
「だろ?」
辺り一面に広がるこの景色が、あのビルからじゃとても想定出来なかった事。
「恭、言ってたよね、ここからの景色がすごいって」
「言ったっけ?」
「うん、言ったよ。あの丘行った事ある?って。景色が凄いって言ってた」
「へー、よく覚えてんな」
「ねぇ、ほら。あそこら辺ってあのビルだよね?」
そう言って向こうの方に指差す。
「え?逆じゃね?あっちじゃねーの?」
恭はあたしとは真逆に指差した。
「え、うそ?」
「嘘じゃねーよ、こっちからずーっと来たんだからよ」
恭は通って来たルートをずーっと指で描く。
「あー…そっか」
「この方向音痴」
「悪かったですね」
フイっとするあたしに恭の笑みが零れる。
その恭の横顔を見つめると、恭は寂しそうに空を見上げてた。