澄んだ空の下で
結局最後まで恭が自転車を漕いでた。
「ごめん、疲れたでしょ?」
「全然」
「ありがと――…」
そう言った時だった。
マンションから慌ただしく駆け足で通り過ぎて行く――…
「お、お姉ちゃん!?」
「あぁ、若菜」
「どうしたの?」
その顔はどう見ても怒りだった。
「来て損したわ」
「え?」
「それでもって思って来たけど、来るんじゃなかった」
「どうしたの?」
「今更帰って来て何の用?だって!確かにあたしが出て行ったわよ!でも、心のどっかで気にしてたし、だから報告がてら帰って来たら、あのザマよ」
「ちょ、落ち着いて、お姉ちゃん」
お姉ちゃんの腕を軽く掴んで揺する。
「はぁ?落ち着けるわけないでしょ!あの人、何も変わってないじゃん!!」
「……」
「なんなの、あの部屋。タバコは溢れ返るわビールの空き缶は山ほどあるし、居場所ないじゃん!」
「……」
「つか、アンタもよく居れるよね。どーせ若菜が全部片付けてんでしょ!?アンタ、嫌じゃないの?」
「……」
「あたしだったらウンザリだわ!ちょっとは変わってると思ったのに…」
お姉ちゃんは長い髪を掻きあげ、ため息を付く。