澄んだ空の下で
散歩って言ってもマンションの敷地内になる小さな広場。
そこにあるベンチに座って、空を仰いだ。
「…若菜ちゃん?」
心配そうな小さな美奈子の声が耳を掠める。
「振られちゃった…」
別に隠すつもりなんて何もなかった。
「え、椎葉先輩に?」
「うん」
「……」
「恭の結婚相手って人の顔合わせ?みたいなのがあってさ、恭に頼まれてたんだ。一緒に来てって」
「……」
「付き合ってますって、偽造で行った。なのに振られちゃった。何してんだろーな、あたし…」
空を仰いでため息を吐きだした。
ほんと何やってんだろ。
恭の人助けした挙句振られるって、みっともなさすぎ。
「…じゃ、なんで若菜ちゃんを誘ったんだろ。それって若菜ちゃんが好きだからなんじゃないの?」
「何でそーなんのよ。振られたって言ったでしょ」
「でも。だっておかしいよ。だったら何でそんな所に若菜ちゃん誘ったの?」
「さぁ…分かんない。そんな事。でも、なんでだろー…行った事に後悔はしてないんだよね」
「……」
「あたしね。卒業したらこの街出ようと思ってる」
「えっ!?なんで?」
「居る理由がないからだよ」
「椎葉先輩に会わない為?」
「ううん。あの人はもともとこの街の人じゃないから、もう卒業したら現われないよ」
「だったら何でっ!?」
美奈子の声が辺りを響かせた。
見上げる夜空に一息吐き、あたしは悲しそうに笑みを見せた。