澄んだ空の下で

美奈子の言った通り、逃げてるんだと思う。

恭の居るこの街から出て何もかも思い出したくはなかった。


って、あたし…

そんな事を思うほど、恭の事が好きだったんだ…


「…っ、」


ギュっと抱きしめられた身体。

美奈子はあたしを抱きしめ、


「若菜ちゃんの傍にあたしが居る。だからお願い、やめないで」


少し震える声でそう言った美奈子の言葉に、あたしの瞳が潤んだ。

そして次第にあたしの瞳から涙が伝う。


そんなあたしに気付いているのに、美奈子は何も言わずにあたしの背中を何度も擦ってた。


ここから出たい理由は母なんかじゃない。

恭から避けるために。

ここに住んでる限り、またどこかで出会って。

そして見かけると、また好きの気持ちが高ぶって、その気持ちで心が苦しくなる。


好きで、好きで、好きで、心が痛い。


″ごめん、若菜とは無理″


頭の中でリピートされるその言葉に、胸が痛い。

嫌いなら嫌いって、言ってほしかった。

好きじゃないって言ってほしかった。


曖昧だらけの言葉よりか、よっぽどそっちの言葉のほうが楽だ。

そのほうが、吹っ切れられるのに…



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