澄んだ空の下で
「え?行かねーの?」
セナさんが、あたしを見た。
そしてそのまま車は路肩に停まり、セナさんはハザードランプをつける。
「…はい」
「んじゃ、帰ろっか」
「…え?」
「え?」
オウム返しで返してきたセナさんはあたしを見て首を傾げる。
「あ、いや…」
「だって行かねえんだろ?んじゃ帰ろう」
そう言われると、何故か帰りたくなくなる。
そう言われると逆に恭に逢いたくなる。
なんなの、この気持ち…
「だ、だって。今更会っても…もう終わってますし」
「ふーん…だから帰ろって言ってんじゃん」
「いや、でも…」
「あー、つか若菜ちゃんどっち?はっきりしなよ、」
「そ、そんな急に言われても。突然、千沙さんに会って、そんな話されて、突然セナさんに連れてってもらうとか…」
「突然って言われても、人生って毎日が突然じゃね?」
「んー…」
「別に俺、若菜ちゃんと恭をくっつける訳でもねぇし、ほら人の恋愛に興味ねぇし」
「……」
「なんつーか、千沙の頼みっつー事でもあるし」
「……」
「若菜ちゃんが恭の事、どうでもいいって言うんなら、それはそれでいいと思ってるし。俺が口出す事でもねーじゃん?」
「……」
「あーっと。ま、これは今からどうするのかの選択で決めて。俺もね、忙しいから。これから仕事」
「すみません…」
何故か突然連れてこられで、何故かあたしが謝る羽目になっている。
相変わらずセナさんは爽やかな顔して、あたしに笑みを向けた。